ドラマ全国放送中止?の「幸色のワンルーム」を読んでみた感想
7月からテレビ朝日で放送予定だった「幸色のワンルーム」、批判が集まったたために関東での放送は中止になり、それに対してまた批判が出ています。(関西圏では放送予定)
「幸色のワンルーム」はtwitterで火がつき、pixivで掲載されていた漫画。
爆発的な閲覧数で単行本化され、今回ドラマ化も決まったそうです。
批判の理由はこの題材(若い男性が女子中学生を誘拐するのだけど、実は・・・)が実際に起きた事件を連想させるのではないか、誘拐肯定に繋がるのではないかというものらしいのですが・・・。
漫画はどう描いているのか?
この漫画を娘が持っていたので読んでみました。
以下は簡単なあらすじ、そして読んだ結果の私の感想です。
(以下ネタバレあります!)
幸色のワンルーム 簡単なあらすじ
中学2年生の少女(のちに「幸」と名付けられる)は、「お兄さん」に誘拐され一緒に暮らすことになった。
「行方不明になった少女」として探されている「幸」。
しかし実は「幸」は親からは虐待され、同級生からはいじめを受け、学校の先生からは性的暴行を受けていて、むしろ「誘拐」されている生活に救いと幸せを感じている。
そんな中、幸の親から依頼された探偵が幸の居場所を追っていく。
まず、「幸」は犯罪に巻き込まれたというよりは、その前から心身ともに傷つけられていて、むしろ「お兄さん」に救われています。
生きることになんの希望もなかった「幸」がだんだんと希望を持っていくなか、「お兄さん」がなぜ「幸」を誘拐することになったのかも明かされていきます。
でも漫画の方もまだ終わっていません。
今は4巻まで出ていて、そこで折り返し地点くらいと書かれているところを見ると、あと4巻くらいは出るのではないでしょうか?
読んでみて、実写ドラマ化には「反対」だと思った
読む前は
「これ批判するなら、誘拐設定の作品はみなダメってことじゃないの?」と思っていました。
で、実際にこの漫画を読んで「誘拐」を肯定しているのではないのはわかりました。
その後ネットで反対や賛成の意見も読んで・・・でもやっぱり実写のドラマ放送は反対だな、と思いました。
まずそもそも、漫画が終わっていなくてこの先の筋がわからない。
最近、まだ続いている漫画をドラマでもやってしまうこと多いですよね。
前からそれもどうかと思っていたんですが、今回のこの漫画はかなりきわどい設定。
このストーリーでいくら「誘拐」が少女を救う手段だったとはいえ、その生活を続けていて、その決着をどうつけるのか今の時点ではわかりません。
もちろん「お兄さん」「幸」ともに今の状態が犯罪だということは自覚していて、この先その生活が変わるのは予想はできますが・・・。
でも「誘拐」は「幸」を救うための突発的な行為だったとして、それ以前にいじめや虐待されている「幸」を見るだけ(抵抗もしない少女を「嫌い」と言いつつ気になって観察)で盗撮、写真を部屋に貼って眺めていた「お兄さん」。
それを見た「幸」が「お兄さん」が自分を好きで盗撮していたと勘違いして
「幸のことこんなに好きな人いるんだって嬉しかった」って言うんですが・・・。
いくらそれまでの「幸」が人間的な暮らしを送っていない設定だとしても、この言葉はまるで盗撮している人間が都合よく思いこみそうなことじゃない?
それから、あらためて被害者の立場に立って考えてみました。
設定が似ているという埼玉朝霞市の女子中学生誘拐事件・・・
「逃げられたはずなのに逃げなかった」という精神状態が、この主人公の「幸」のように、「本当は本人の意思なんじゃないの?」と思っていた人、実際にたくさんいたようですね。
その誘拐された少女がしていたように、漫画の主人公「幸」もネットやテレビでクラスメイトや親が自分を探しているのを知りますが、「幸」はその人たちに「偽善者!」と思います。(「幸」は家族に虐待され、クラスメイトにはいじめられていたので)
これは実際の事件と関係ないと言われても、誘拐された被害者や家族が目にしたらすごく嫌な感じだろうな・・・。
実際の少女誘拐事件では、被害者の少女はPTSDを負い、この先もどういう影響があるかわからない。
自殺願望を持った若い女性たちがtwitterで連絡をとった見ず知らずの男に出会い、お金を奪われたり性暴力を受けたりした後にアパートで次々に殺された、とんでもなく恐ろしい事件もありましたよね。
漫画の中で違和感のあった場面は他にもありました。
一緒に住み始めた「幸」がお兄さんに体を洗ってもらうんですが、それは虐待によってあざだらけの体をお兄さんに見てもらう目的だそうで?
カミソリを見せても怖がらない「幸」に(恐怖感が麻痺している)と感じる「お兄さん」は彼女の心と体の傷を知って衝撃を受けるんですが・・・。
性被害受けた少女が、付き合ってもいない若い男性に体を洗ってもらうのがそもそも「え?」だし、そんな少女を洗いながら、ただ彼女の傷を思いやる優しい「お兄さん」て・・・そんな対応期待したら、少女は間違いなく2次被害受けるよなぁ。
ここまで書いて、この漫画へ感じていた違和感がわかりました。
盗撮や誘拐をした「お兄さん」は今までの少女漫画の常識からは異色なんですが、中身は少女漫画に出てくる「素敵な彼」そのままなんだって。
(マスクしてるけどイケメンだし!この「お兄さん」がこの漫画人気の大きな要素)
漫画ならまだ「フィクション」感があるけど、実写にすることでリアリティが高まる気がします。
今の日本で毎日のように未成年の子供達が狙われて犯罪にあったりしているのを考えると、周囲に虐げられている女子生徒を唯一助けた相手が「前から少女を盗撮していた見ず知らずの男性」という設定のドラマを全国放送する意味って、何・・・?
色々な影響が生まれることが予想されるこのドラマをあえて放送する意味を、制作側はどれくらい重く考えていたのかな?
「表現の自由」って、特定の誰かを傷つけたり、似たような犯罪を増やすかもしれないってことよりも大事なことではないと思う。
うちの中学生たちの意見
この漫画、長女が今年購入したものです。
この漫画をもとにした実写ドラマがどうして全国での放送を取りやめたのか知ってる?と聞いたら長女、次女とも「知らない」と・・・。
少女が誘拐されたあの事件すら知りませんでした。
聞いたことあるような・・・程度。
ちなみに実写ドラマ化に対しては二人とも反対でした。
その理由は私とは全く違って、「漫画を実写にするとイメージが崩れるから嫌だ」ということでした。
この事件を知らないで買った子供達からこの漫画を取り上げるつもりもないし、この漫画がこれからどういう決着をつけるのかは興味があります。
ただこの漫画がモデルにしたかのような、実際の被害者がいる少女誘拐事件があった、ということは言っておきました。
このドラマは全国で放送中止なのではなく、関西では放送予定だそうです。
それも不思議といえば不思議なのですが、最近少女が巻きこまれた事件がすべて関東で起きていることで影響度が違うという判断なのかもしれません。
関西圏ではどういう反応があるのか気になります。