勝手気ままにイラストコラム

音楽・芸能ネタのイラストコラム。育児マンガ・水彩イラストは「Suiの水彩日記」にて。

「母さんがどんなに僕を嫌いでも」読んだ感想と、虐待について考えた。

歌川たいじさんの描いた自伝漫画を読みました。

歌川さんはlivedoorの公式ブロガーでもあり、小説も執筆されていてファンもとても多い方です。

この自伝は映画化され今秋に公開される予定だそうです。

内容はなんとなくは想像していたのですが、歌川さんの歩んできたいばらだらけの半生の過酷さと、なぜこんなに親による虐待があるのかということを考えました。

新版 母さんがどんなに僕を嫌いでも

新版 母さんがどんなに僕を嫌いでも

 

 

 

超簡単なあらすじ

たいじ(「さん」省略します)の母親は美しくカリスマ性のある女性だった。

母を慕うたいじに、しかし母は冷たく、言葉や暴力でたいじを傷つける。

家出をし自立したたいじは、自分の傷に苛まれながらも自分の居場所を見つけていくのだった。

 紆余曲折を繰り返しながらなんとか自信をつけたたいじは、母親と向き合う決心をする。

しかしなかなか一筋縄ではいかず・・・。

 この本は漫画で描かれていて、けっこうユーモアのあるタッチなんですけど、内容が壮絶すぎます。

母親だけではなく、父親も子供に愛情を持っているとはとうてい思えません。

でもたいじさんは母親の愛をずーっと求め続けているんですよね。

 

小さい頃、子供にとって親はすべて。

卵からかえった雛が最初に見た生き物についていくように、どんな親でも子供は慕うんです。

母親の愛情を求めるのは本能といってもいいかも・・・。

 

しかし母から受けた、虐待シーンがところどころに出てきます。

きっと現実はこの100倍くらいひどかったのではと思います。

それを思い出して描くのは本人も辛かったでしょうね。

だいぶ簡略化して描いているのは、自分は許した母親を世間が許さないのではという思いや、読み手がショックを受けてしまう、など色々あったのかなと思います。

でも周囲が引いてしまうような傷が身体中にあるって・・・。

そんなことを自分の子供にできるとは。 

精神的にもですが、たいじさんの場合は肉体的な虐待も受け、食生活的にも栄養が不足していた。

たいじさんは心の隙間を埋めるように食べ物を体に入れ、太っていきます。

読んでいても、母から1mmもたいじさんへの愛情を感じませんでした。

むしろ憎しみや嫌悪感。

でもたいじさんは、そんな酷い仕打ちをした母親を許しました。

それはなぜなのか。

そして子供を愛せない母親・・・どうしてそうなってしまったのか?

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なぜ子供を愛せない母親がいるのか? 

「親(特に母親)は、誰でも自分の子供を無条件に愛せる」と当たり前のように言われているけど、そういうわけではないって、なんとなく皆気がついていますよね。

子供に愛を感じるかどうかは、母親の子供時代の環境や、お腹の中で育っていく子への愛着や母親の性格、パートナーとの関係、周囲に助けてくれる人がいるか、そして子供の個性などが関係すると思います。

 そして実は、虐待までいかないまでも子供を愛せない母親はけっこういると思います。

でも母親に愛されないっていうのは、子供にとって人生に及ぼすダメージは相当なものです。

 

実はたいじさんのお母さん自体も虐待に近い形で育てられていて、お母さんも常に「愛」を求めていたんです。

それは「自分の子供」では埋められなかった。

それでも虐待していい理由になんて決してなりません。

でも彼女も子供時代は被害者だった。

そして本にも書かれていましたが、会社の経理や家事育児、姑の世話、従業員の面倒・・・そして望まない子供(何とたいじさん本人に言います!)の出産と子育て。

すべてが母親にのしかかった。

 

ここであらためて考えたのが愛情含め、すべてを「与え続けること」が母親だとして、「与えてもらってないものを人に与えられるのか」ということ。

たいじさんは、親からは愛情を受けられませんでしたが、ばあちゃんなど他人からの愛を受けられました。

そこはすごく大きかったと思います。

 だからといって与えられなかった人たちが皆子供を放置したり虐待したりするというわけでは決してありません。

自分が与えられなかった愛情を子に与え、お世話することで「子供時代の自分自身」も癒されていくこともあると思います。

自分が親に悩まされてきたからこそ、自分は絶対に同じことはしない!と強く思う人もいますよね。

でもたいじさんのお母さんはそう思えなかったんですね・・・。

 もし夫との関係が良好で、そこまでの重圧がない環境だったら違ったのかも?

とはいえお母さんはその後も違う彼と破局を繰り返しているらしく、難しい性格だとは思います。

 

そんな酷い仕打ちを繰り返してきた母親を許せたのは、たいじさんの温かい性格もですが、周囲の友人の言葉も大きいのでした。

いや〜、本当に素敵な人ばっかり!

特に、母にわだかまりを持つたいじさんに、親友キミツさんが言った言葉。

あまりくわしく書きすぎるのも、と思うので、これは本でご確認ください。

 

「許す」ことって本当に難しい・・・。

そしてたいじさんには「そんな親を許すなんて」という意見も寄せられたそうです。

おそらく私には無理です。

・・・でも、母は自分が全くサポートしていないところで成長したたいじさんが、誰もよりつかなくなった自分に諦めずに接し続けてくれたことで、自分自身を振り返って、自分がしてきた「罪」に本当に悔いを感じたのでは・・と思いました。

 

ちなみに、内容はかなりヘビーですがユーモアのあるタッチなので、そんなに暗くは感じませんでした。 

虐待を防ぐために

たいじさんも、そのパートナーのツレちゃんも、母は途中から一人で子育てしました。

子供を産むということは同じでも、母親の置かれている環境は千差満別。

たとえば手のかかる赤ちゃんでも、自分も育休手当が出て経済的に安定、夫も家事育児を分担、親も近くに住んで何かと頼れるという母親と、夫は逃げ、親は疎遠や死別、お金に困っているけど働き口もない母親。

ある人はある、ない人はとことんない・・・。

本当は、ない人にどうサポートするのかが福祉だと思うんですけど、ないないづくしの母親は、福祉を利用することも考えられなかったりする。

結果、出会い系などで知り合った男とすぐに同棲、その男が子供に危害を加えることも起こりやすくなります。

 

 児童相談所の職員が増えること、もっと権限が強くなって子供を保護できるようになることは大事ですが、まずその前に「虐待しやすくなる環境」を作らないようにするのが1番。

そのためには、母親(父親)一人であっても安心して子育てできるように変えていかないといけないのでは。

日本の片親世帯の貧困率は高いです。

子供がいるからお金がかかるのに、子供がいるからこそ(子供の病気などで)ちゃんと働けない。

シングルマザーだと足元を見られて、大変で無理な仕事をやらされがちという話も聞いたことがあります。

子供にただご飯を与えてればいいわけではなく、教育や健康へのケア、学校に入ればのしかかるPTAの負担・・・。

夫婦二人で分担しても色々な負担にヒーヒーしているのに、一人だと子育て・家事・働き手を全部しないといけないから親も余裕なくなりますよね。

虐待にも色々な形がありますが、毎日の暮らしにあえいでいる親の負担を少し軽くすること、孤立化を防ぐことで虐待も減らせるのでは・・・。

 

それから、子育てがどういうことなのか、ちゃんと授業で教えた方がいい。

少子化も進んで周囲に子供がいなくなってきました。

私は、赤ちゃんてもっと寝てるかと思っていましたが、実際は性格にもよるけど全然寝てくれなかったり、常に泣いていてどうしていいかわかりませんでした。

それから子供がどんなに病気をするのかも初めて知りました。

いくら医療や科学が発達しても、人間の免疫力は急に飛躍するわけではなく、病原菌やウィルスと戦って免疫をつけていくのはそれなりに時間がかかります。

大人の思う通り、効率的にはいかないんです。

妊娠・出産・赤ちゃんのケアなど、男女含めて学生のうちに実際に今子育て中の人にもっと接する時間を作るべきです。

それは子供をもつ、もたないに限らず、自分がどういうふうに育ってきたのか知ることにもなる。

そうすると、他人の子供がすることにも「自分もそうだった」って思えるんではないかな?

日本は子育て世帯が肩身狭すぎです。

実際にPTAで「公園でボール遊びさせるな」と言われたり、学校前の道に信号機設置の署名を集めた時に「自分の家に排気ガスがくるから嫌」と言われたり・・

子供の安全や遊び場所もなかなか確保できないんです。

 

「子供を育てること」はおままごとじゃない。

キラキラした幸せな日ばかりでもない。

ぶっちゃけて言うと、子供が小さいうちは汚物の処理と子供の要求に答えることが子育ての9割以上です。

フェイスブックやインスタの可愛らしい写真は、子育ての上澄み5%くらいのものです。

でもその日々の中で、子供の本当の可愛らしさや愛おしさも感じられる。

英語やプログラミングも大事ですけど、「妊娠や出産、子育て」を知ることはもっと重要だと思います。

 

虐待は絶対に許すことはできないけど、虐待した後に親を責めるだけではなく、どうしたら虐待で傷つく子供が出ないようにするのか?

根本を解決するために、社会全体も変わっていく必要があるなあ、とつくづく思います。

 他の本の感想↓

suisa.hatenablog.com

 

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